ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」 超入門
著者 : 山中俊之
『TOPPOINT 2022 年 5 月号』 より
民族の定義は難しい
民族は人種ではない
国籍や国民を意味するものでもない
東アジアの中では、歴史的に中国が絶大な影響力を持つ
中国の人口の 92 % を漢民族が占め、残りは 55 の少数民族
中国が初めて統一されたのは紀元前 3 世紀の秦の時代
秦はわずか 15 年で滅び、漢王朝ができた
400 年の漢王朝の時代の文化を担った人々を中心に漢民族と呼ばれるようになった
その次の晋王朝の皇帝も漢民族だったが、そのあとは漢民族以外の出自の皇帝による隋、唐、宋、元が続く
最後の王朝である清の皇帝は満州族
漢民族が中心なのは、人口の多さと漢字による文化形成
現在の中国では、漢民族以外への弾圧がある (国際問題にもなっている)
中国共産党は、漢民族を中心に、少数民族を含む中華民族という新たな民族を作ろうとしている
ウイグル人やチベット人が反発している
香港の人々も多くは漢民族だが、北京とも上海とも異なる広東文化があったところに、アヘン戦争後のイギリス支配による英語文化も加わっている
漢民族であるという意識はあるが、中華民族に組み込まれることには複雑な思いの人が多い
台湾は歴史的には東南アジアの国々に近い
現在の台湾は多民族国家
漢民族の他、43 の少数民族が暮らす
漢民族が本格的に台湾に住み始めたのは 17 世紀
日清戦争の後、蔣介石率いる中華民国・南京国民政府軍がやってきた
国の権力は新たに中国から来た漢民族が独占し、もともと台湾に住んでいた漢民族は阻害された
ヨーロッパ
イギリスは 4 つの国の連合王国
今のイギリス領とアイルランド領には、古代からゲール語を話すケルト系の人々が住んでいた
そこからアイルランド、スコットランド、ウェールズという国が生まれて、それぞれ独自の文化を保持 (今もある程度は)
イングランドは、5 世紀にやってきたゲルマン系アングロサクソン人が作った国がもとになっている
1066 年にフランスにいたノルマン人に征服された
アングロサクソン + ノルマン が現在のイングランド人の原型
フランスは国民国家という概念を初めて具体化した
きっかけは 1789 年のフランス革命
「唯一の公用語はフランス語」 と決めて、言語で国家の統一を図った
現在のドイツの領土は、中世では神聖ローマ帝国の名のもと、ヨーロッパ全体はハプスブルク家の支配下にあり、カトリック教会も絶大な権力を持っていた
神聖ローマ帝国は分権的
18 世紀ごろのドイツ各地には自治を認められた自由都市が複数あり、それぞれ独自の文化をはぐくむように
その雰囲気のもと、芸術家や哲学者が多く生まれた
ロシアには、強いリーダーを求める歴史的な傾向
農奴制やそれに近い仕組みが 19 世紀まであった → 支配者に暮らしを良くすることを望む傾向
旧ソ連のほとんどの国はロシア嫌いだが、ベラルーシはロシア寄り
ウクライナはロシアのライバル (むしろ、「ウクライナこそロシアの本家」 との思いがある)
ロシアの歴史の始まりであるキエフ大公国は現在のウクライナに位置していた
アメリカの始まりは、イギリスのピューリタンが 「正しいプロテスタントの国をつくりたい」 と新天地を目指したこと
先住民としてネイティブ・アメリカンやイヌイット、ハワイ先住民がいる
当時はインディアンと呼ばれていたネイティブ・アメリカンは、開拓地に土地を奪われて居住エリアを失っていった
インディアン強制移住法
1863 年の奴隷解放宣言
その後も黒人は差別対象だったため不利な条件で働き続け、アジア系の移民も加わった
清がアヘン戦争で敗北して混乱に陥ったあと、新天地で活路を見出そうとする中国人が増えた
中国人に仕事を奪われるという意識が広がり、中国移民については法律で規制 → 代わりに日本人移民が増える
彼らは第 2 次世界大戦のとき、フランクリン・ルーズベルト大統領により敵国の人間として強制収容された
同様に敵国だったドイツ系やイタリア系の移民は強制収容されていないので、人種にこだわるところがあるのかもしれない
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